着飾りたい日だってある、自分じゃなくても

「かねてから思っていたのだけど」

 天照国、夕方、某宿の大浴場。偶然が重なり財団女性職員の殆どが同じ時間に入浴していた。
 母国の感覚で各々の水着を着用し様々なスタイルで(熱めのお湯のため足を付けるだけだったり、しっかり肩まで浸かったり、泳いだり、遊んだり。本当に様々なスタイルで)温泉を楽しんでいた中、ローザが声を上げた。視線の先には彼女の相棒であるメルヴィと、メリーやリネットを巻き込んではしゃぐロミーの姿。

「メルもロミーもスタイルいいから、着飾ったらもっと素敵になると思うのよ」
「えっあたし?」
「何をいきなり……」

 ローザの言葉に他の職員たちもそういえば、と口々に話をし始める。ロミーは唐突に名前を呼ばれ何のことか分からずメルヴィに説明の視線を向けるが、彼女もまた肩をすくめるだけで何も言わない。どうしてこういう流れになったのか全く分からないのだ。
 二人を置いたまま話はどんどん盛り上がっていく。メイクやファッションに疎い二人には会話に飛び交う単語の半分も分からない。そのままの盛り上がりで会話に参加していた女性陣がわっと二人に振り向いた。

「じゃあ温泉から上がったら、色々やってみましょう!」
「いいわね、賛成」
「お二人の女性らしい姿……。私、気になりますっ!」
「あっあの、何かお手伝いできることありますか……?」
「そうだねぇ。それじゃあ、何着か衣装を借りてきてくれるかい? メイジーとメリーも一緒に」
「ぴぇっ! わっ、私なんかが行ってもいいんでしょうか……?」
「え、と。……わかりました」
「じゃあ私たちはメイク担当ね」
「ヘアアレンジなら任せてください」

 ローザから始まりロウェルが賛成し、エルザが目を輝かせリネットが手伝いを申し出てそれにアコモが役割を渡し、メイジーとメリーが了承の旨を伝えてエイプリルが張り切りアレッタが意気込む。
 雪崩のように何かが決まっていく。取り残されている二人に分かるのは、それが温泉から上がった後の自分たちの身に起こることだという事実だけだった。


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BC財団 調査員 ローザ・クリントンさん、エルザ・プラマティテさん、リネット・ナイトリーさん、アコモ・デートラックさん、メイジー・ナイトさん、エイプリル・レインさん
研究員 ロウェル=ベルデさん、メリー・メリーさん
警備員 アレッタ・マグノイアさん、ロミー・ブレイスマンさん
→ほぼ名前だけの方が多いですが、お借りしました。
不都合ありましたらパラレルとして扱ってください。